冷徹部長の溺愛の餌食になりました
「……他の女の話題出したから、嫉妬したか?」
それは、この心を見透かすように問いかける。
知られたくない、見られたくない、私の本当の心。
昼間は『好きな人の幸せを願える人でいたい』なんて言ったけれど、結局そんなの綺麗事だと思い知る。
実際は、その目が他の人のほうへ向くのがつらい。
彼女を見ないで。私だけを見てほしい。
その心にも、この心と同じだけ好きの気持ちを抱いていてほしい。
嫉妬と願望が胸に溢れて止まらなくなる。こんな自分を見せるのは怖いのに、それでも、思いを留めてはおけない。
「そうですって言ったら、引きますか?」
小さな声で問いかけた私に久我さんは目を細めて、どうしてか嬉しそうに微笑んで首を横に振った。
「引かないよ。……むしろ、そういうところがかわいく思えて調子狂う」
その言葉とともに、ポケットからなにかを取り出す。
それは銀色の平たい正方形のケースに赤いリボンがつけられたもので、彼はそれを私の手にそっと持たせた。
「これなんですか?」
「開けてみろ」
言われるがまま、リボンをほどいてケースを開ける。
するとそこには、先ほどテーマパークで見ていたマーメイドモチーフのネックレスが輝いていた。
「え……これって、どうして」
「霧崎なら似合うんじゃないかと思って。帰り際トイレ行くふりして買ってきた」
私の、ために?
そういえば帰り際、トイレに行ってくると言って一度離れたっけ。
あの場所からお店まで結構距離あったのに、わざわざ買いに行ってくれたんだ。私に気付かれないように、きっと走ってくれたのだと思う。
いつも涼しい顔をする彼が、自分のために動いてくれたのかと思うと、ちょっと、いやかなり嬉しい。