冷徹部長の溺愛の餌食になりました
「これ、久我さんが作ったんですか?」
「もちろん。あ、もしかして朝から飯食えないタイプか?」
「いえ全然!お腹ぺこぺこです!」
その言葉通りお腹がぐううと鳴る。それを聞いて久我さんはおかしそうに笑った。
ふたりローテーブルの前に座ると、並んで朝食を取り始めた。トーストにバターをたっぷり塗ってひと口かじると、サクッといい音がする。
「お前、一度家帰ってから出勤するだろ?余裕持って出ないと遅刻するぞ」
「はーい……」
コーヒーを飲む久我さんの言葉に、そういえば今日は月曜だったと一気に現実に戻される。
あぁ、このまま久我さんともう一日、のんびりべったり過ごしたかった。
いや、会社に行っても久我さんと同じ場所にはいられるんだけどさ。そうじゃなくて……。
「あ、そうだ」
考えていると、久我さんはなにかを思い出したようにカップをテーブルに置く。
そしてポケットから、昨日私にくれたネックレスを取り出した。
「昨日、これつけたまま寝てたから。危ないと思って外しておいた」
「すみません、ありがとうございます」
そういえば、昨日外した記憶がなかった。ちゃんと気づいて外してくれたんだ。
そういうさりげない優しさが、やっぱり好きだなぁ。
久我さんは、正面からうなじに手を回してネックレスをつけてくれる。
大きな窓から入り込む陽の光であふれる部屋の中、至近距離で見つめ合うと、どちらからともなくキスをした。
苦い、コーヒー味のキス。彼にとっては濃いバターの味がして、朝には少し重いかもしれない。
そんなことを思いながら、幸せを噛み締めた。