冷徹部長の溺愛の餌食になりました
それから一度自宅に戻った私は、シャワーを浴びてメイクを直し……と身支度を整え出社した。
けれど少し気をぬくと頭の中は久我さんでいっぱいになってしまって、仕事の合間も私はぽやーと昨夜の思い出にひたっていた。
デートしてお泊まりして、一緒に朝ごはんを食べて。これって、本当の恋人みたいじゃない?
昨日からの久我さんはいつもよりも優しく感じられて、これまで以上に心の近づきを感じている。
もしかして、責任感とか形だけとかじゃなくて、私自身の存在が少しでもその胸に存在しているのかな、なんて。
希望を抱かずにはいられず、思わずにやける顔を両手でおさえた。
「こーら、霧崎。手止まってるぞ」
するとその時、背後からなにかで軽く頭を叩かれた。
振り向くとそこには、筒状に丸めた書類を手にした馳くんが呆れた顔で私を見ていた。
その書類で頭を叩かれたのだと気づくと、今が仕事中だと思い出してハッとした。
「そのデータ、今日中にまとめるように言われてるはずだけど間に合うのか?」
「はっ!ごめん!」
目の前のパソコンの画面は十分前とほとんど変わっていない。まずい、仕事に集中しなければ。
幸いオフィス内に久我さんはいない。もしこんな状況を見られようものなら、確実に叱られていただろう。
仕事を再開させるべく画面と向き合う私にも、馳さんはなにか言いたげに視線を向けている。