冷徹部長の溺愛の餌食になりました
「うん、行きたい」
「じゃあ決まり。俺と霧崎と、あとプロジェクトメンバーに隣の部署の小宮山さんもいるから、そっちの部署のやつらも声かけてるから」
小宮山、さん……。
その名前に心臓がドキリと震えた。名前を聞くたび、あの夜のことを思い出して胸が痛い。
彼女も久我さんと同じプロジェクトにいたんだ。
仕事できる人だって聞いたし……当然か。
「にしても、小宮山さんって美人だよな〜。あの見た目で仕事も出来て、今回のプロジェクトでも久我さんのサポートでかなり活躍したらしい」
馳くんがなにげなく話すその言葉がチクチクと刺さる。
苦しくて上手く笑えないけれど、口角を必死に持ち上げて笑みを作った。
「へぇ……そうなんだ、すごい」
「あの久我さんの仕事についていけるなんて、さすがだよなぁ。久我さんはもちろん小宮山さんも、俺たちとは別世界の人って感じだよ」
別世界の、人。
そうかもしれない。久我さんが大変な思いをしている中、なにもできなかった私とは違って、彼女は彼を支えられていた。
その事実に距離を感じて、この心に寂しさを感じさせた。
「……私、経理部に書類提出してくるね」
「ん?あぁ」
彼女の話題から逃げたくて、私は書類を手にとると席を立つ。
今持っていかなくてはいけない書類ではない。けれど、これ以上小宮山さんの存在を突きつけられたくなくて逃げ出した。