最後の初恋
ただ単に上体だけを無理やり向けてもダメだ。以前それでぶっ飛んでいる。
ターンを仕上げ、スキー板からの撓みを脚から頭の先に向け、そのエネルギーを斜面下に向けるんだ。
よし。イメージはできた。覚悟も決まった。
大したことではない。彩菜は当たり前のように滑っていることだ。
そしてスタートを切った。瞬間、以前彩菜が見せた心配そうな、どこか不思議な顔が浮かだが直ぐ前に集中した。
スタート直後の中斜面の2走旗をスケーティングで加速しながら急斜面に入った。
3走旗、いつもよりターンを速く仕上げることに意識し、スキー板の撓りを素早く捉え下へと体を落とし込んで行く。スキーが走っている。
4走旗、スピードが増し遠心力も全身に圧し掛かってくるが上手くスキーの真上に乗りますます加速する。
5走旗、ターンに入る前、大きく上体を倒し込む。上体が綺麗に落下方向へ落とし込むことができた。
―――この感覚か!
次の瞬間俺は、これまでに感じたことのない遠心力をスキー板で捉えた。全身でそのエネルギーを受け止め5走旗に向けて解放した。
―――凄い! こんなに走る感覚は初めてだ!
俺は未知の領域に突入して興奮していた。
そしていよいよ6走旗。もはや恐れるものは無し!
大きく体を落下方向に落とし込んで行く。即、更なる遠心力が全身を襲いかかる。
よし、いける! 今の感覚と同じだ!
それを全身で受け止めスキー板に力をため込む。
スキー板が大きく撓り、俺の心も大きく弾んだ。
そして俺はため込んだ力を一気に解放する正にその瞬間、立木が目に入ってしまった。
―――しまった!
瞬時に気に迷が! スキー板が僅かに雪面に引っかかり軌道が変わってしまった。
否、視界には立木が迫ってくる!
斜面下に向いていた上体も遂に立木の方に向いてしまったのである。
―――ダメだ! もう方向転換はできない!
時速60㎞以上は出ているはずである。立木にぶち当たるのはもう数秒か?
しかし、コマ送りの様に時間は遅く感じられる。まるで死に向かう恐怖を知らしめるかのように。
立木を回避することはできないようだ。俺の体は動かない。
ターンを仕上げ、スキー板からの撓みを脚から頭の先に向け、そのエネルギーを斜面下に向けるんだ。
よし。イメージはできた。覚悟も決まった。
大したことではない。彩菜は当たり前のように滑っていることだ。
そしてスタートを切った。瞬間、以前彩菜が見せた心配そうな、どこか不思議な顔が浮かだが直ぐ前に集中した。
スタート直後の中斜面の2走旗をスケーティングで加速しながら急斜面に入った。
3走旗、いつもよりターンを速く仕上げることに意識し、スキー板の撓りを素早く捉え下へと体を落とし込んで行く。スキーが走っている。
4走旗、スピードが増し遠心力も全身に圧し掛かってくるが上手くスキーの真上に乗りますます加速する。
5走旗、ターンに入る前、大きく上体を倒し込む。上体が綺麗に落下方向へ落とし込むことができた。
―――この感覚か!
次の瞬間俺は、これまでに感じたことのない遠心力をスキー板で捉えた。全身でそのエネルギーを受け止め5走旗に向けて解放した。
―――凄い! こんなに走る感覚は初めてだ!
俺は未知の領域に突入して興奮していた。
そしていよいよ6走旗。もはや恐れるものは無し!
大きく体を落下方向に落とし込んで行く。即、更なる遠心力が全身を襲いかかる。
よし、いける! 今の感覚と同じだ!
それを全身で受け止めスキー板に力をため込む。
スキー板が大きく撓り、俺の心も大きく弾んだ。
そして俺はため込んだ力を一気に解放する正にその瞬間、立木が目に入ってしまった。
―――しまった!
瞬時に気に迷が! スキー板が僅かに雪面に引っかかり軌道が変わってしまった。
否、視界には立木が迫ってくる!
斜面下に向いていた上体も遂に立木の方に向いてしまったのである。
―――ダメだ! もう方向転換はできない!
時速60㎞以上は出ているはずである。立木にぶち当たるのはもう数秒か?
しかし、コマ送りの様に時間は遅く感じられる。まるで死に向かう恐怖を知らしめるかのように。
立木を回避することはできないようだ。俺の体は動かない。