最後の初恋
怪我で済むのか、それとも俺はこれで死ぬのか・・・
とその時、頭の中に直接声が響いた。俺の声ではない。
そう、それは生まれた時から知っている声。

『神様、優人を救って! お願い!
 ・・・・・・・・・・・・・・!』

 次の瞬間、俺の意識が飛んだ。
 ああ、俺はこれで死ぬんだな。
 結局俺はヘタレだ。
 
  *****

 ふわふわした雪が腰のあたりまで積っている。
 山の頂上から躊躇いもなく真っ直ぐに、ひたすら真っ直ぐに滑って行く。
『わー、すっげースピード! 雪でまえがみえない』
『キャ~、ヘッヘッヘーすごーい、もっともっととばすぞ―― !』
『うわーっ! 雪の下にコブがあった――― どわっ―――』
『キャハハハ、ゆうちゃん、ころんでやんの!』
『ガハハ、ふかふかで、ぜんぜんいたくないや。でも、あやちゃんころばないね』
『わたしはこんなんじゃ、ころばないよーだ!』

『優ちゃんレースやってみない?』
『レースってあの旗が立っているやつ?』
『うん!』
『かってにすべって怒られないかな?』
『だいじょうぶ。私のえがおで大人もいちころよ』
『ゴキブリも彩ちゃんに、いちころだしね』

『やったね! 全中でGSとSLで一番取ったぞ~~~!』
『彩菜は凄いな~。俺なんかSLで3位だけだ』
『だいたい優人はヘタレなんだから』
『あのな、そうズケズケと人が気にしてること言うなよな!』
『エヘヘ。ヘタレ~』
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