最後の初恋
『優人、これまでごめんね』
―何がだ?
『ずっとヘタレ扱いで』
―何を今更。お前にしては珍しいな。そんなお通夜みたいなセリフ。
『私だってただの女の子だよ。たまには素直になるの』
―らしくないから止めろよ。
『でも良かった。優人が元気で・・・』

  *****

 俺はいったい何をしているんだっけ?
 ―――――――――――― !
 げ――――――――――っ !
 旗門が迫っている!
 俺、練習中に意識が飛んでた???
 やばい、滑りどころではない。取り敢えず旗門を避けなければ!
 よし! 取り敢えず目先の旗門を越せば後は何とかなる。斜面ももう急斜面から緩斜面へと移る所であった。
 そして難なくゴールして考えてみる。
 何だか不思議な感覚に包まれた1本だった。確か、自分の壁を乗り越えるために決心をして滑りだしたはずだ。
 しかし、肝心の6走旗あたりの記憶が曖昧だ。
 滑っている間に色んな景色が見えたようなのは俺の錯覚か?
 しかも、通常1本滑る時間は50秒くらいだが、とても長い時間に感じられた。
 第一滑っている間に記憶がバラバラで、繋がらないなんてあり得ない。
 何かが起こった?
 ふと周りを見るとゴールエリアには誰も人がいない。通常であればコーチがいてアドバイスをしているはずである。
 しかも生徒も一人もいない。
ふと頭の中で声が蘇った。
『優人、これまでごめんね』
―――彩菜!
何故だか嫌な予感が全身を駆け巡った。彩菜は何処だ?
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