最後の初恋
「ただいま」
「こんにちは~♪」
「て、何で俺ん家までついて来るんだ!」
「今日、お母さんがお出かけで晩ご飯がないからなのだ」
「て、またかよ」
 そう。彩菜とは幼馴染で家も近所と言うことで赤ん坊の時からの付き合いである。
長野県のスキー場近くでの近所付き合いは濃く、この辺りの子供は兄妹のように育っている。特に深山家と星野家は繋がりが濃く、彩菜とは飯とかはもちろん、子供の頃はお風呂や一緒の布団で寝起きすることもしょっちゅうだった。
まあ今更、彩菜の幸薄いおっぱいには興味はないが。
「おばちゃん、ただいま! 今日の晩ご飯はなあに?」
「おや、彩菜ちゃん。今日はカレーよ」
「やったー ! もう私お腹空き過ぎて、せっかく成長したおっぱいがへこみそう」
 何処にへこむ余地がある。
「おやおや、それは大変ね。じゃあ、へこむ前に冷蔵庫にある豚まんでも食べて待ってて」
「やったー ! ありがとう! じゃあ優人、温めて部屋に持って行くね」
「おっ、サンキュー」
 て、自分の家かよ。

「はい、お待ちどうさま。豚まんだよ~」
「うし、食うか」
 彩菜は俺の横のベッドの上で胡坐(あぐら)をかき豚まんに食らいつく。
「ふっは~ 熱っつ~いけど、う~ん、幸せ~」
「ホントお前は生きてて幸せいっぱい、悩みなんてありませんって感じだな」
「優人みたいにネガネガ・ネガティブにいても人生勿体ないじゃん。そんなんだから美奈にも見向きもされないのよ」
「え、全く脈なしか?」
「私の知る限りじゃ、美奈は上級生に好きな人がいるみたいよ。だって美奈ってモテるからね」
 そうなのである。美奈ちゃんは、見た目はもちろん、スタイルも良く性格も優しくて誰とでも話してくれる明るくてそれでいて知的な清楚感があり、クラスどころか学校中でも評判の娘なのである。
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