8月のミラージュ 【ママの手料理 番外編】
そんなマイナスな事ばかりを捉えてきた俺らは、幻を見たかった。



関わった誰かの心に少しでも残る幻(蜃気楼)になりたくて、幻として存在したかった。



「だから、俺らの名前は“mirage”なんだ」



そう話し終えると。



「…感動した。普通に、率直に感動した」



ズズーッとタピオカを吸い込み、新たに商品のアニマルマカロンに手を出しながら、チビはパチパチと手を叩いた。



「凄いね、ちゃんとした理由があって。…皆は、私の心に残ってるし、本当にそういう存在になれてるから…、本気で凄いと思う」



幻って…蜃気楼っていつかは消えちゃうかもしれないけど、皆は消えないで欲しい。私は、私の大切な家族をもう2度と失いたくないから…、と、少ししんみりした表情で話す紫苑の頭を、俺は思わずわしゃわしゃと撫でていた。



「当たり前だろ、お前の家族はもう居なくなんねぇよ」



今の彼女の台詞を他の家族のメンバーが聞いたら、どんな反応をするだろう。



泣くだろうか。



飛び跳ねるだろうか。



どちらにせよ、嬉しくて喜ぶのは確かだ。



(mirage)



俺は、心の中でその言葉を繰り返す。



(俺らは、ちゃんと人の心に残る存在になれてるぞ)



それが、嬉しくて嬉しくて。



塩対応で滅多に泣かない事で有名なはずの俺の目の奥が、熱く熱く燃え上がった。
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