この世界を、きみとふたり生きた奇跡。


一日限りではあるけれど、私が今入院しているのは、4階にある脳外科の病棟。


県内でも大きめな規模の総合病院だから、テラスもそれなりに広くて、緑色の観葉植物に囲まれるようにイスや机が10つくらい設置されている。


150センチ後半くらいある私の背丈より少し低いほどの高さの柵の向こう側には、限りなく真っ青な空が広がっていて。


きれいだなあと思いながら、ふうっと一息吐いた。


どこに座ろうかな、と辺りを見渡すけれど、残念ながら席はもう全て埋まっていて、座っているほとんどの人がまだ小さな子どもだったから、変わってとも言えないし……。


それにしても、なんでこんなに子どもばっかりなんだろうと思ったら、4階には小児科もあるんだっけ。それを思い出した私は、ああ、だからかと一人納得する。


もう一度周りを見ても席が空いていなかったこともあり、私は柵にもたれて風を感じることに決めた。


柵のすぐそばまで行き、パジャマのズボンに持っていたスマートフォンをしまう。そして片手を柵に添えて、空を見上げた、──その時。


「お前、きれーな顔してんのな」


突然、誰かに話しかけられた。


今の、私に言ったんだよね……?

不思議に思い、ゆっくりと顔を声のした方に向けると、そこには私より10センチほど背の高い男の子が真っ直ぐに私を見つめていた。


「なあ、無視?」

「え、いや、そんなわけじゃ、」

「俺がきれーな顔してるって言ってんだから、ありがとうくらい言えよな」


……何を言うのかと思えば、生意気な。


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