この世界を、きみとふたり生きた奇跡。
普段からロックをかけていないから、私のスマホはされるがままで。
取り返そうと腕を伸ばしたけれど、日向は両腕を空中に伸ばすようにして操作しているから、背の小さな私には届かない。
頑張って背伸びをしようにも、捻っていた足に痛みが走るから無理だし。
……こんな人いる?
人のスマホを奪って、勝手に操作して。
「はい。メッセージアプリに、俺の連絡先いれといたから」
そう言いながら、なんでもなかったかのように私のスマホを返してくる。
強引で、自分勝手で、なによりも年上の私に対して、こんな扱いってあるの?
「すぐに消すからいいもん」
「ざーんねん。俺のアプリにも、未央の連絡先入ってるから。また会おうよ」
爽やかに笑った日向は、自分の右腕に付けられている腕時計で時間を確認する。
そして、何を思ったのか、キョロキョロと周りを見渡し始めた。
「ん、あった」
ぽつりと一言呟いた日向は、自分のそばにあったイスを柵の近くまで引き寄せて。
「はい、どーぞ」
と、私に座れとでも言うように指差した。