この世界を、きみとふたり生きた奇跡。
翌朝。
昨日の午後に無事退院した私は、慣れ親しんだ家で目を覚ますと、ぐーっと背伸びをするように腕を突き上げる。
私の目覚ましの音が聞こえたのか、お母さんが部屋をノックして、中に入ってきた。
「未央ー?調子はどう?」
お母さんの顔には、まだ心配な色が見える。
私はそんなお母さんを安心させるように、にっこりと口角をあげて笑った。
「大丈夫だよ。頭のたんこぶはまだ膨れてるし、右足も少し痛むけど、身体は元気だから。今日は学校行くよ」
「でも、今日金曜日なんだし、一日休んだって……」
「ダメだよ。咲とか、クラスのみんなにも心配かけちゃったし、メッセージだってたくさんきてたから、行かなきゃ。ちゃんと、心配かけてごめんなさいって謝りたい」
それでもお母さんは腑に落ちない顔をしていたから、きっともう一日くらいゆっくり休んでいてほしいのだろう。
だけど、私はやっぱり謝りたい。
大好きなクラスメイトや咲にたくさん迷惑をかけてしまったから、みんなの顔を見てそれを謝らなきゃ、私はずっと申し訳ないなってモヤモヤしたままだもん。
身体は元気なんだから、平気。
もうあんなドジもしない。……と、絶対は言い切れないけれど。それでもちゃんと気をつけて行動するし。
「お母さんお願い。学校に行かせて?」
頼み込むように頭を下げると、優しいお母さんは困ったように笑いながら、「仕方ないわね」と許してくれた。
〝無理なことはしないし、ダメだと思ったら周りに頼る〟
お母さんと交わした約束。
私はお母さんの言葉に強く頷くと、1日ぶりの制服に腕を通して登校の準備をし始めた。