この世界を、きみとふたり生きた奇跡。



高校までは、徒歩10分。


とくに行きたい高校もなかった私は、一番家から近いところ、という理由で今の高校を選んだ。


今となっては、その判断は正解だったと思う。


家から近いと登下校の時間が短縮されるのはもちろん、何より人に恵まれている。


高校の友達はみんな優しくていい子で、私の見えていないところでギスギスしてるところもあるのかもしれないけれど、目立ったいじめとかはないと思う。


男女ともに仲が良くて、先生と生徒の距離もいい意味で近い。


毎日学校に行くとみんなが〝おはよう〟って挨拶してくれて、そんな日々を過ごしていると、とても幸せだなあと思う。


……あ、そういえば。ふと、私は昨日のことを思い出した。


日向は、どこの高校に通っているのだろう。


私と同じ高校、ってことはないと思う。なんの根拠はないけどさ。


……聞いて、みようかな。


そう思ってスマートフォンを取り出すと、日向とのメッセージ画面を表示した。


昨日はあの後、日向からの返信がきて、何度かメッセージが続いていたんだ。


《おう、どういたしまして。未央、お礼ちゃんと言えるのな》

《ねぇ、一言よけいだよ。うるさいなあ。私だって、ちゃんとありがとうくらい言えるよ。まあ、日向よりも年上だしね》

《いや、未央、全然年上に見えねーよ?なんていうか、ちっこいし》

《何言ってんの。私、同級生に混ざると平均か、大きいほうだからね?》

《俺にとっては、ちっこいんだよ》


なんて、初めて交わす会話とは言い難い会話をした後、最後は日向からの、


《じゃあ、おやすみ》


というメッセージで終わっていた。


私はそれに続くように自然に、


《おはよう。そういえば日向って、高校どこなの?ふと気になって》


そう文章を打ち込んで送信する。


すぐには返事は返ってこなくて、もう登校してるのかなあ、と解釈した私は、手に持っていたままのスマホをスクールバックのなかにしまうと、紅葉がひらりと舞い落ちる道を踏みしめながら歩いた。



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