この世界を、きみとふたり生きた奇跡。
第1章 秋の葉とともに落ちた出会い

突然の出来事




それは、私が高校2年生の秋に起こった出来事だった。

自分の視界がぐらりと揺らぎ、急に見ていた景色が全く違うものに変わる。

……あ、やばい。そう直感で思った時にはもう遅く、私は後頭部と背中、そして肘を強く床に打ち付けていた。


「……痛い」


あまりの衝撃に頭にチカチカと閃光が走り、何が何だか分からない。全身に鈍い痛みを感じながら、なぜこんなことになったのかと考えを巡らせる。

……そうだ。つい先程体育の授業が終わり、私は体育委員に入っている親友の(さき)が行なっている片付けの手伝いをしていた。

そのため、体育倉庫の中で私の身長よりも幾分も高い脚立に上って、授業で着用していたゼッケンの入ったかごをしまおうとしていた私。

懸命に手を伸ばし、ようやくかごをしまうことができた、と思って油断したその時、バランスを上手いこと保てず体勢を崩し、脚立から真っ逆さまに落ちてしまったんだ。

その拍子に多分、右足も少し挫いたのだと思う。鋭い痛みがそこにも走る。


「ちょっと、未央(みお)、大丈夫?」

「……咲、ごめん。完全に私の不注意だ。落ちちゃった」

「いやいや、落ちちゃったじゃないから。全く、未央は普段も良く躓いたりしてこっちも心配なんだからね。ほら、立てる?頭とか打ってない?」


心配そうな顔をしながらも右手を差し伸べてくれる咲は、もう一度「ほら」と言うと、仰向けに転がっている私の右手に手を重ね、私の身体を手前に引こうとする。


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