この世界を、きみとふたり生きた奇跡。
だから私もその手を強く握り、とにかくその場に座ろうと身体に力を込めた。
……けれど。
「……っ」
ぐわあ、という表現が一番しっくりくるだろうか。
起き上がろうとした途端に頭全体に鋭い激痛が走って、一瞬思考が真っ白になる。無意識のうちに足にも力が入っていたのか、挫いた右足もズキンと痛んだ。
「うう、痛い……」
思わず咲の手を離して頭に触れると、後頭部に大きなこぶができているのが分かる。
それもそうか、結構激しく頭をぶつけてしまったのだから。
今日はついていない日かもしれないなあ。
なんて、そんなことを悠長に考えていられたのはその時だけで、気が付けば私の視界はみるみるうちにぼやけ、視野も狭まっていく。
さっきまでクリアに見えていた咲の表情も、今はもうほとんど読み取れない。
「咲……」
「え……?ちょっと、未央。大丈夫なの?……未央?」
「いや、結構やばいかも……」
もう喉から言葉を押し出すことすらしんどく感じて、このままだと無理だと思った私は素直にそれを打ち明ける。
そしたら咲は、「今、先生呼んでくるからね。ここで待ってて。絶対に動いたらだめだからね」と、そう私に念を押して、その場を走り去った。