この世界を、きみとふたり生きた奇跡。
ぼんやりと薄れていく意識のなか、自分はなんてバカなのだろうと考える。
「本当、バカ、だなあ……っ、いたっ」
少し言葉を話すだけで、ズキッと鋭く疼く頭部。
「未央、先生連れてきたよ。大丈夫!?」
「おい、白石!わかるか?今、保健室の先生もきてるからな。……っておい、白石!?大丈夫か!?おい!……し……しら……」
途中まではちゃんと聞けていたはずなのに、頭を打ち付けたばかりだからなのか、頭痛は治らない。そして、スウッと飲み込まれるようにして消えていった先生の声。
鈍る意識の中で最後に見たのは、心配そうな親友の顔と、目をこれでもかと見開いた体育教師であり、担任の先生の顔だった。
・
──お、みお………
どこか遠くの方で、誰かが私の名前を呼んでいるような気がする。
必死に、何度も何度も。
「未央……ねぇ、未央……」
その声の大きさは回数を増すにつれ、どんどん近く、そしてはっきりと聞こえてくる。
……あ、そうだ。私、ゼッケンをしまおうとして、あの後……。
だんだんと意識がしっかりしてきて、目の前は真っ暗闇なのに今日起こった出来事が鮮明に頭によみがえる。
目を開けたいのに、まぶたが想像以上に重くて開かない。
「未央、大丈夫よ……」
その時、さっきよりもはっきりと耳に届いた声。
「おか、あ、さん……」
私のお母さんだと、すぐに分かった。