この世界を、きみとふたり生きた奇跡。
そしてその瞬間、どうしてでも目を開かなきゃという気持ちが一気にわきあがる。
そう思っていたら、自然と目が開いていた。
「未央……!」
重たいまぶたをあげた私の瞳に一番に映ったのは、私の名前をずっと呼んでくれていたお母さんの顔だった。
お母さんはひどく心配そうな顔をしていたけれど、私が目を覚ました様子を見て、すぐに安堵の表情を浮かべて泣きそうになりながらも微笑んだ。
「よかった……。あなた、学校で意識失ったのよ?それで、病院に運ばれたのよ?」
「病院……?」
「ええ。ここ、病院よ」
その言葉に、驚きながらも納得する私。
……そっか。てっきりあの後保健室に運ばれたのかと思っていたけれど、違ったんだ。私が運ばれたのは、病院だったんだ。
それを知り、キョロキョロと眼球を動かすと、確かに保健室とは違うところがたくさんある。
私の口元についている透明の緑の酸素マスクだって、保健室には置いてないから。
……となると、今回の私は、咲や先生、クラスメイト、そして家族。たくさんの人に迷惑をかけたんだなあ。
そう思うと、かなり申し訳ないという気持ちが浮かんでくる。
ふと目に入ったデジタル時計は、時刻21:52を指していたから、きっと咲はもう家に帰っているんだと思う。
ちゃんと、謝らないとなあ。
なんて思っていると、病室のドアがカラカラっと開いて、お医者さんと、看護師さんに連れられた弟が入ってきた。
「ねーね、大丈夫?」
今年年長にあがった6歳の弟は、私を見ると、眠そうに目をこすりながらもふわっとした顔で笑う。
「大丈夫だよ、ねーね、ほら、もう元気だよ」
看護師さんが酸素マスクをはずしてくれて口元が自由になったから、弟の龍ににこりと笑いかけると、龍もあどけない顔で、
「よかった!」
と、とびきりの笑顔を見せてくれた。