この世界を、きみとふたり生きた奇跡。
お母さんが私の世話をしてくれている看護師さんに、「龍のこと、ありがとうございました」ってお礼を言っていたから、きっと私の目が覚めるまでなんらかの形で龍のことを見てくれていたんじゃないかな。
そう考えると、私は看護師さんたちにも迷惑をかけてしまったということだ。
「それにしても、未央が無事でなにより。お母さん、何年寿命が縮まったことかしら」
「……うん。ごめんね、お母さん」
「お医者さまには、今はまだ眠ってるだけで命に別状はないですよって言われたんだけど、それでもすごい心配だったの」
お母さんはお医者さんと目を合わせると、優しく目尻を落とす。
「未央までいなくなったらどうしようって、そう考えると怖くて怖くて」
その言葉に、私は何も言わずそっと微笑むだけ。
「大丈夫だよ、お母さん。私はまだまだこの世界で生きていくつもりだから。私がやりたいこと、たっくさんあるからね」
まだ不安げな表情を浮かべるお母さんを安心させるように、一言一言、ちゃんと目を見て。
お母さんの気持ちは、私にも痛いほどわかるから。
……というのも、私のお父さんは3年前に亡くなった。原因は、交通事故だった。
お父さんが亡くなってからは、私と龍とお母さん、3人での生活はいろんな面で大変なこともあったけど、それでも私たち家族は乗り越えてきた。
お母さんはお父さんがいなくなって、すごく苦労したと思う。
それこそ、配偶者であるお父さんが亡くなって、その喪失感がストレスになって、精神の病気であるうつ病にもかかっちゃったし、今も精神安定剤はかかせないし。
私も悲しくてたくさん泣いたけど、一番つらかったのは、ずっとそばにいて、誰よりも頼りにしていた存在を亡くしたお母さんなはずだから。