泣いた、緋鬼
「ごめん…。私のこと……、嫌いになっちゃったよね…」

涙で滲んだ視界では、希くんがどんな顔をしているのか分からない。

でも、それで良かったのかもしれない。





希くんが私を怨んだ目で見ているのなんて、耐えられないから―――。





私の初恋はここで終わっちゃうんだ―――。





そう、思ったのに。

「未菜。泣くな」

フワッと森林の香りに包まれた。

優しく、希くんが抱き締めてくれる。





「――どう、してっ……⁉私のせいで……、幻夢くんが……!」





「うん。確かに、幻夢が死んだのは、未菜にも原因があるかもしれない。―――でもさ、未菜の母ちゃんが未菜のところに行かなかったら、未菜は死んでたかもしれない。俺は、そんなの嫌だ」




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