泣いた、緋鬼
私が言うと、希くんは顔を赤くして私の額に自分の額をコツンと重ねる。

「……それは反則」

希くんの甘い囁きに、ゆっくりと目を閉じる。

希くんのおでこが私から離れて、ゆっくりと、今度は唇と唇が重なる。



―――昨日は、届かなかった距離。





やっと、やっと、届いた。

柔らかくて、温かい感触。





希くん――――。





「大好きだよ…」

希くんの瞳を見て、抱きつく。

鼻腔いっぱいに希くんの匂いを吸い込むと、心が落ち着いていく。

「急に……、そんなこと言うなよ……。マジ……、可愛すぎんだろ…」

頭上から、希くんのそんな声が降ってくる。
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