泣いた、緋鬼
「――ちょっとショックだけど…。許す」

口を尖らせて言うと、希くんが笑った。

「ハハッ。許すって言う割りには拗ねてんじゃん」

私の頬を両手で包んで、希くんが至近距離で私と目を合わせる。

「これからさ、未菜の出来なかったこと、俺と一緒に叶えてけばいいじゃん。その……、恋人、なんだし?」

顔を赤くして恥じらいながら言う希くんに今度はこっちが笑ってしまう。

「そこはもっと堂々と言ってよ―」

「うっせぇ。こっちは恋愛初心者なんだよッ!」

「そこは私も同じだよ?」

首を傾げて言うと、希くんはプイッと顔をそらした。

茹でダコみたいに真っ赤になった顔。
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