泣いた、緋鬼
「勝負に卑怯もくそもネェよ。勝敗がついちまえば、あとはこっちのもんだ。何も考えずに正攻法に戦おうとするなんて甘いんだよ」

そう言うと、輝明はポケットから小型のナイフを取り出した。

「あいつに勝つためなら、あんたをこのナイフで痛め付ける事だって躊躇しないぜ?」

輝明はわざとらしくナイフを未菜の前でちらつかせる。




「―――!――はぁ、はぁ」





恐怖から、未菜の心拍数が上がっていく。





「――んん?なんだ、演技か?残念ながら俺に病人の演技は通用しねぇよ」





輝明はペッと唾を吐き出すとぐいっと未菜の髪を掴んで持ち上げる。

そして、ナイフの刃をそっと未菜の首筋に当てた。
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