泣いた、緋鬼
「噂でよく聞くの。[レッドナックル]がこの町の暴走族を仕切ってから、夜中に暴走するバイクがなくなったって――」
未菜は言いかけて、俺の流血している腕を持ち上げて、近くにあった布で手当てをしはじめた。
「――おい、別にやってもらわなくても……」
俺が言っても未菜は何も言わずに手当てを続ける。
ちょっとして、俺の腕は綺麗に止血された。
「――何も聞かないんだな」
「別に聞く必要は無いでしょ?」
小さく頷いて、慶太の所に戻ろうと体を駐車場に向ける。
未菜は微笑んで、俺に手を振った。
「また来てね、希くん…」
歩いている途中に、風に乗って未菜の声が小さく聞こえた。