泣いた、緋鬼
「――ウッ、グスっ……!」
いろんな人がすすり泣く声が聞こえて、私はゆっくりと目を覚ました。
正確には、意識が現実世界に帰ってきた、とでも言った方が正しいのだろうけれど。
この場にいる全員が黒い喪服に身を包み、顔を抑えて泣いている。
――お母さん、看護師さん、福院長……。
決して多くはないけれど、それでも確かに来てくれた人がいることにホッとする。
ずっと、病室で過ごしていると、生きているのか、死んでいるのか分からないのに近かったから。
辺りを少し見回して、希くんの姿を探す。
しかし、彼の目立つ身長も、整った顔も見当たらない。