泣いた、緋鬼
特に、こういう非現実的な現象は、私一人の脳じゃ考えてもきりがないだろう。





「――ウウッ、未菜っ……」





目の前で母が鼻水をだらだらと足らしながら泣いている。

白いハンカチを強く握りしめて、何かに必死に耐えている気がする。





「――おかあさーん?」





ヒラヒラと手を振って呼びかけてみたけれど、母は応答せずなき続けている。

「……」

今度は母の頭を撫でようと頭に手を置こうとしたけれど、私の手はするりと母の頭をすり抜けてしまった。





――幽霊って、本当にこんなに無力なんだ。





なんて、どうでもいいことを思いながら、フヨフヨと浮遊しながら葬儀場を見て回る。
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