泣いた、緋鬼
まだ、希くんが来ているっていう可能性を捨てきれないから、今度は館内をくまなく見て回る。

だけど、希くんはどこにもいなかった。

やっぱり、死んじゃった私にはもう用なんてないのかもしれない。

それはそれで悲しいけれど、少なくとも希くんが私のことを引きずっていなくて良かったのかもしれない。





――そう思うことにして、クルリと体を一回転させて葬儀場に戻ろうとした。





その時―――。





「ちょ、ちょっと、ヤバイって、勝手に…」

「うるさいよン。今謝らなくていつ謝るの?」

「いや、でもさ…、服だって喪服じゃないし?」

「制服で十分でしょ?まさか、留年になったからって、制服まで無くなるわけじゃないでしょう?」
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