泣いた、緋鬼
亡くなった弟の、名前。

それが何を意味しているのかくらい、母にも分かったのだろう。

母は深く息を吸うと、将太さんの瞳を見つめた。





「――実はね、私が、最後に娘に言った言葉が、『―――この親不孝娘が』…だったの。最低よね。彼は…、希くんは、未菜に、最後何て言ったの?」





母が恐る恐る将太さんに聞くと、将太さんは思い出すそぶりを見せて、答えた。





「『未菜…、愛してる…、ずっと…――――』って……」





――最後に、希くんはそんなこと言ってくれてたの?





うれしい、うれしいよ、希くん――!






ポロポロと涙がこぼれ落ちる。

私も、好き。愛してる。
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