泣いた、緋鬼
意外と薄情な男ね、なんて毒づいてみる。

でも、これは、あの葬式の日に罪深いことにも忘れないで、なんて祈ってしまった私への報いなのかもしれない。

きっと、あんなにかっこいい希くんのことだ。

彼女の一人や二人、出来ただろう。

悲しくない訳じゃないけれど、それが正しいのだと言われれば、死人は何も言えない。





どうぞお幸せにってね―――。


墓場から祈ってるよ、なんて言ったら呪ってやるなんて意味合いにとられそうで心配だけれど。

また一人、墓参りに誰かが来る。

きっと、将太さんだろう。

将太さんは毎年来てくれるけど、今年はまだ来てくれていないから。
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