泣いた、緋鬼
足をブラブラとさせながら、こちらに向かってくる将太さんを待つ。

もちろん、将太さんには私は見えていないけれど。

だんだんと近づいてくるその姿を見て、私は目を疑う。





だって、そこに居たのは――――。





紛れもなく、希くんだったから。

急いで、前髪を整える。

こんなことしてもどうせ見えないんだから意味は無いって分かってるんだけど、久しぶりに会った彼を見ると、落ち着いてなんかいられなかった。

バクバクと心音が高鳴る。

希くんはゆっくりと歩いてくると、私の墓の前で止まった。

手には花を抱えて、少し寂しそうな笑顔で笑って言った。
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