泣いた、緋鬼
そう言って被っていたフードをパサリと落とす。

その瞬間、男は一瞬にして顔をひきつらせた。





「レ、[レッドナックル]の《緋鬼》(あかおに)――――!」





男は俺をそう呼ぶと、悲鳴をあげながら逃げようとする。





「―――逃がさねぇよ」





逃げようとしている男の服の襟を掴んで、壁に叩きつける。

ガッターン!とそこにあったゴミ箱が音をたてて倒れた。

「あーあ、お前のせいで町が汚くなっちまったなぁ?」

顔に微笑を浮かべて、衝撃でうずくまっている男に近づく。




「ひっ――!やめてくれ、来ないでくれ!俺が、俺が悪かったから――!」




さっきの威勢はどこへやら、男は俺に頭を下げて懇願する。
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