泣いた、緋鬼
ガン!

男の下がった頭に思いきり足を降り下ろすと、思ったよりも鈍い音がなった。

あー、こりゃ鼻折れてっかもなぁ。

「お前、何で俺が《緋鬼》って呼ばれてるか、知ってるか?」

男の髪を掴み、引っ張りあげると不様にも男は鼻から血を出していて、俺を怯えた目で見てくる。

その顔にフッと笑うと男に聞いた。

「血で真っ赤に染まるまで殴り続ける冷酷無慙な男、だからだってよ?お前、俺がそんな風に見える?」

男の目をじっと探るように見る。

その怯えた目は、聞かなくても「そうだ」と言っているようなものだった。

にもかかわらず。

「そんなことっ……、ありませんっ……!」



―――なんて、嘘をつくから。


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