泣いた、緋鬼
「―――未菜!」
母の声がしたと同時に、ぎゅつと母に抱き締められる。
さっき、希くんにされたように。
「未菜、ゆーっくり息を吸うのよ…」
「スゥーーーっ……」
母に言われた通りに息を吸う。
同時に、母の香水の匂いが鼻腔に入ってくる。
―――あ、これ、希くんと同じ匂いだ。
どうりで、母と一緒に居ると落ち着くのか。
「はい、吐いて――――」
「はぁーーー……」
「また吸って――――」
母のお陰で乱れていた心拍数が徐々に落ち着いていく。
「―――ふぅ、今回は一段と危なかったわ。未菜。あなたは他の人より死にやすいんだからもっと気を付けてちょうだい」