泣いた、緋鬼
洗面所から出てリビングに入ると、雑然とした光景が広がる。

「あー、しばらく片付けてネェからな……」

希は頭をガシガシとかくと、適当に足元の物をどかし始める。

「うわー、絶対終わんないわ、これ」

片づけ始めて五分で嘆くと、希はどさりとソファに腰かけた。

長い間、希はボーッと天井を見つめると、ため息を吐いて起き上がる。

「少し走るか」

そう呟いて玄関に移動する。

床に転がっている鍵を二つ拾い上げると、外に出る。

家の鍵をかけて、バイクに股がると、ポケットの中から小さな香水を取り出した。

それは、森林の匂いの香水だった。
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