泣いた、緋鬼




「―――いってないんだな」





「総長もっすよ!――――――ゴホッ⁉」





不満げに口を尖らせる慶太に希は軽くエルボーを食らわすと、足を引きずりながら転倒しているバイクを起こす。

「あー、でも良かったっすねぇ、総長。この前の病院近いっすよ」

慶太が安心したように指差した先には、未菜と希が出会った病院があった。

「あそこからまた包帯貰えるっすから、俺要らないっすね!じゃ、用事あるんで失礼するっす!」

そう言うと、慶太は希を置いてそそくさと消えてしまう。

希は少し躊躇ったように病院を見たが、足の怪我の状態を認識すると、諦めたように病院に向かった。
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