泣いた、緋鬼
―――バキッ!
男の顔面を全力で殴った。
男がどさりと地面に倒れ込む。
「おい、お前、《緋鬼》の噂に足しとけよ。『嘘が大っ嫌い』だってな」
男にそう言うと、路地裏から色とりどりに彩られた繁華街へと出る。
夜だと言うのに明るいここは、俺にとっては落ち着かない――。
「希、こっち徘徊終わったよン♪」
背後から、同じ暴走族の仲間で俺の信頼している一人である岡多将太(おかだ しょうた)が近づいてきた。
「終わったか。――――異常は?」
「特になし。おっさんとJKが一緒にホテル入ってったくらいかなー」
「そう言う情報は要らねぇ」