泣いた、緋鬼
俺が言うと、将太は口を尖らせた。




「――そっちは異常あったみいだね。服に血付いてるよン。さっすが《緋鬼》♪」



将太が冷やかすように言ってくる。

「そう言うお前こそ、どんなに反り血を浴びても表情一つ変えずに笑い続ける残酷な《碧鬼》って呼ばれてんだろうが」

「俺その《碧鬼》って呼ばれんのスゲェ嫌ーい。なーんか、ダサくね?どうせなら《闇に潜むプリンス》にしてほしかったなー」

「やめてくれ、族に色魔は二人も要らない。誠で十分だ」

顔を横に振ると、将太が不服そうな顔をする。

『誠』とは、俺の族の幹部で、極度の女たらしである。




その誠も、もうすぐ戻ってくるはずなんだが――。




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