泣いた、緋鬼
「調理実習で作ったんです。是非、未菜さんにあげたいなと思って」

顔を赤くしながら説明する彼はとても可愛らしい。

弟にほしいくらいだ。

でも私、鈍感じゃないから気づいてるよ。

彼の好意にくらい。




「ありがとう。―――美味しそうだね」





さっきから「ありがとう」ばっかり言ってるけど、これが私と彼のいつも通りの会話。

お互いに距離を取り合いながら話している。

彼は私の病気の事を熟知しているし、なるべく私を興奮させるようなことはしないようにと、気を回してくれているのだろう。

彼から手渡されたクッキーを受けとり、一枚手に取る。
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