泣いた、緋鬼




付き合ってても届かない距離に居る未菜を捨てることなんて俺には――――出来ない。




[幻夢]は大事だ。





大事だけど――――。





「将太…俺は…[幻夢]が大事……だけど……」

言葉を濁しながら将太の顔を見ると、将太は怒りで満ちた顔をしていた。

勢いでバン!とバイクを倒すと、将太は俺の胸ぐらをつかみあげた。

「お前分かってるのか⁉あの子を姫にすることなんて出来ないぞ!」

そう怒鳴って、俺を睨み付ける。






――――将太、違うんだよ、俺は。






未菜を姫にしたいんじゃなくて、ただ、二人で居たいだけなんだ。

苦悶の表情を浮かべて、将太を突き放す。
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