泣いた、緋鬼
―――――嫌だ。何この話。聞きたくない――!
「手術中にね、副院長が駆け込んできて教えてくれたの。
『娘さんが発作を起こして危ない状態です』って―――。
未菜の発作は私にしか抑えられない。それで私は
―――まだ経験が浅い新人の子に任せて手術を途中で放棄したの」
母は白衣のポケットから小さな瓶を取り出した。
「手術を任せた新人の子は一生懸命にやってくれたわ。でもね、駄目だった。あとからその新人の子に言われたの。『僕は駄目だったけれど、貴方なら絶対あの手術は成功していた』って」
母は私に小さな瓶を握らせた。
「贖罪とまではいかないけれど、この香水はね、無くなった幻夢くんが使っていた香水なの」