敏腕社長は哀しき音色に恋をする 【番外編 完】
「だからね、あの時事故にあって、もうピアノが弾けないってなった時、ショックな気持ちはもちろんあったけど……
落ち着いてきた時、ホッとする自分がいたのも本当なの。これで私は、ピアニスト以外の道を目指す理由ができたってね」

「お姉ちゃん、私……」

「もともと、あの事故は華のせいじゃないでしょ?なのに、華はずっと自分を責めてるし、だんだん家族とも周囲の人とも距離をおき始めるし。
華がピアノを弾かなくなった時は、私、どうしていいかわからなかったんだから」

「ごめん、お姉ちゃん。ごめん……」

涙が次から次へと溢れてきた。

「華、泣かないで。もう今の華なら大丈夫でしょ?須藤さんに守られてる華は、輝いてるもん。
今の華がどんな演奏をするのか楽しみ!
バーでピアノを弾いてるんでしょ?今度、洋太と一緒に聴きに行くわ」

「うん。ありがとう、お姉ちゃん」



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