敏腕社長は哀しき音色に恋をする 【番外編 完】
そして迎えた本番。

「恭介さん、じゃあ楽しんでね。私、控え室に行ってきます」

「ああ。華も楽しんでおいで」


なんて華を送り出したことを、この後後悔することになる。





開店記念ということもあり、今日はオーナーの柿本さんがマイクを手に挨拶をした。

「それでは、本日はいつものソロピアノに加えて、アンサンブルもお楽しみください」



拍手とともに、華が椅子に座って一曲目を弾いた。
続いて、サキソフォーン奏者が加わった。

ん?男……ま、まあ、……50代ぐらいかな?




ーポール・デズモンド 〈テイク・ファイブ〉ー



妖艶なサキソフォーンの音色は、確かに素晴らしい。
華のピアノも主旋律に絶妙に絡み合い、心地よいアンサンブルを奏でていた。

が、しかし、あの目配せはいただけない!!
拍子を合わせているのはわかる。
だけど……目を合わせすぎじゃないか!?

なんとも言えないもやもやした気持ちのまま、演奏が終わった。

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