敏腕社長は哀しき音色に恋をする 【番外編 完】
羽山音楽スタジオは想像以上に大きくて驚いた。
講師もたくさんいて、ピアノだけでなく複数の管楽器や弦楽器のレッスンも開講していた。

受付で名前を告げて5分ほど待っていると、羽山先生が出てきた。

「神崎華さん、ここまでよく来てくれましたね。ありがとう」

「い、いえ。こちらこそ、先日はわざわざ自宅まで来てくださったそうで、ありがとうございます」

「いいんですよ。私が勝手に行ったんですから。さあそちらの部屋で少しお話ししましょう」


机を挟んで向かい合って座ると、受付の方がお茶を出してくれた。


「神崎さん、先日私がお母様にお話ししたことは聞いていると思いますが、あなたはもう一度ピアノを弾く気はありませんか?」

「……私は……私のせいでピアノを弾けなくなった姉に申し訳なくて……自分だけピアニストになる夢を追い求めるなんて、私にはできません」
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