敏腕社長は哀しき音色に恋をする 【番外編 完】
「ピアノに携わる仕事は、何もピアニストだけではありませんよ。私のように、講師になることもできます。もっと言えば、趣味でもいいんですよ」

一瞬、どういうことなのかと考えた。

「神崎さん、前にも話したのを覚えてますか?あなたのピアノの音色は深みがあって本当に素敵です。私はあなたのピアノの大ファンなんですよ。ですから、どんな形でもかまわないので、あなたにはピアノに関わっていて欲しいと願っているのです」

「ピアニストじゃなくても?」

「ええ」

「私、ピアノから離れている時もずっと心の中にピアノの存在があって、忘れたいのに消えてくれなかったんです。
ピアノが大好きなんです。
本当は、ピアノを弾きたいんです」

本心を話すと、涙が次から次へと溢れてきた。
先生は私にハンカチを渡し、落ち着くのを待ってくれた。
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