敏腕社長は哀しき音色に恋をする 【番外編 完】



とりあえず、やりかけていた仕事をこなし、谷川さんから頼まれた資料作りを始めた。
ちょっとやっかいだけど……大丈夫。
確か、以前作った資料に少し手を加えれば使えそう。


資料作りに没頭していると、いつのまにかランチタイムになっていた。
お互いに誘い合ったり、同期と待ち合わせしたりして休憩をとる者が多い。

就職したての頃は、私をランチに誘ってくれる人もいた。
でも、今は滅多にいない。
それは、毎回私が断っているからだ。
私は、ずっと前から周りと距離を置いて生きてきた。


職場では、真っ黒なロングヘアーを一つに結び、化粧は申し訳程度の薄化粧ですませ、メガネをかけている。
地味な格好なのはわかっている。
誰からも目を留められず、何かに波風を立てられることなく、ただ淡々と日々を過ごしたいからそうしている。
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