敏腕社長は哀しき音色に恋をする 【番外編 完】
「華ちゃんどう?」

「とっても良い雰囲気ですね。お客さんもちゃんと演奏に耳を傾けていて、弾き甲斐がありそうですね」

「そうよね!!気持ちは決まったかしら?」

私の表情に感じるものがあったのか、佐織さんが返事を確信したかのように聞いた。

「はい。やらせていただきたいです」

正直、コンクールに出ることやプロのピアニストになる気は全くない。
ただ、ほんの少しだけ、自分のピアノを聴いてもらいたいという欲が自分の中に生まれていた。

「それはよかった。それじゃあ、早速オーナーと話をしよう。神崎さんの条件も、一緒に詰めていきましょう」


こうして、その日のうちにオーナーの柿本さんと会い、話をした。
私から出した条件は4つ。

○報酬は受け取らないこと
○自由に選曲させてもらうこと
○あくまで会社が優先で、やむを得ない時はお休みできること
○私に関して尋ねられても素性を一切明かさず、取次にも応じないこと

柿本さんは、どれも大丈夫だと条件をのんでくれた。
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