敏腕社長は哀しき音色に恋をする 【番外編 完】
「佐織さん、ただ一つ気がかりなことがあるんです」

「なあに?」

「このお店は会社から近いし、万が一会社の方が来た時、ピアノを弾いているのが私だってばれたくないんです」

「なんだ、そんなの簡単よ。変身しちゃえばいいのよ!」

「変身?ですか?」

「そう。華ちゃんって美人さんなんだから、もっと着飾ればいいのよ。きっと別人になれるわよ」

「美人だなんて、そんなことないです。
性格ですよね……目立たないようにって、つい地味になってしまうんです」

「そっかあ。なんかもったいないなあ。一歩踏み出したら、きっといろんなことが変わると思うの。それも良い方にね。
そのためにも、バーでの演奏はいいきっかけになるかもしれないわね。
それでね、変身のことだけど、私に任せてよ」

「どうするんですか?」

「メイクもヘアアレンジも普段とは全く変えて、お店の雰囲気に合ったドレスを着るの。
私の妹が美容師で、近くでお店を出してるの。毎回やってくれるように頼んでおくわ。
それから、ドレスは何着か一緒に選びに行きましょう」
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