敏腕社長は哀しき音色に恋をする 【番外編 完】
バーでの演奏まで、いろいろな曲を練習した。
佐織さんの協力もあって、ジャズやボサノバのレパートリーも増やした。
そして、いよいよ初日を迎えた。
この日は、羽山先生も佐織さんも来店してくださる予定だ。
ーBar やどり木ー
ライラックのロングドレスを着て、メイクもヘアアレンジも整うと、背筋がすっと伸びた。
人前で弾くのはどれぐらいぶりだろう。
思いのほか、心地良い緊張感に包まれた。
ピアノの演奏は、特に合図なく始められる。
曲もピアニストの紹介もない。
私は自分のタイミングで、静かに店内へ足を踏み入れた。
私に気がついた客が、さっと顔を上げたのがわかった。
「ピアニストが変わったな」
「本当だ。今度は若い女性か……綺麗な人だな」
「な。後で声をかけてみるか」
ささやき声がじわじわと広がり、椅子に座る頃には店内にいたほとんどの客の目が、新しい演奏者に向けられた。
佐織さんの協力もあって、ジャズやボサノバのレパートリーも増やした。
そして、いよいよ初日を迎えた。
この日は、羽山先生も佐織さんも来店してくださる予定だ。
ーBar やどり木ー
ライラックのロングドレスを着て、メイクもヘアアレンジも整うと、背筋がすっと伸びた。
人前で弾くのはどれぐらいぶりだろう。
思いのほか、心地良い緊張感に包まれた。
ピアノの演奏は、特に合図なく始められる。
曲もピアニストの紹介もない。
私は自分のタイミングで、静かに店内へ足を踏み入れた。
私に気がついた客が、さっと顔を上げたのがわかった。
「ピアニストが変わったな」
「本当だ。今度は若い女性か……綺麗な人だな」
「な。後で声をかけてみるか」
ささやき声がじわじわと広がり、椅子に座る頃には店内にいたほとんどの客の目が、新しい演奏者に向けられた。