敏腕社長は哀しき音色に恋をする 【番外編 完】

定時になり、デスク周りを片付け始めた。

そそくさと職場を後にして向かったのが、2駅行ったところにあるビルの2階。


〝羽山音楽スタジオ〟


私はここへ、ピアノを弾きに来る。
数年前に縁あってピアノ講師の羽山先生に出会い、以来ずっと通っている。
先生の計らいで、自由に使ってよい練習室がある。
おまけに、月に数回、先生の時間がある時に無償でレッスンもつけてくださる。
先生には感謝してもしきれない。


50代になる羽山貴明先生は、ピアノ講師として有名な方だ。
そんなすごい先生が、私に目をかけてくださる。

「神崎さん、私はあなたのピアノの大ファンです。これは完全に私のわがままですが、決してピアノを辞めないで欲しい。
自分のためでも、他の誰かのためでもかまわない。どんな形でもいいから、ピアノを続けてください」
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