敏腕社長は哀しき音色に恋をする 【番外編 完】

敏腕社長が来店しました。

金曜日の今夜、ピアノ演奏のためにやどり木へ来ていた。
ドレスを着て、加織さんにメイクと髪を仕上げてもらい、出番を待っていた。


「華ちゃん、今日も素敵ね！最近ますます輝いてるのは自信がついてきたからかしら？」

「自信はないですけど……なんか、最近ますますここへ来ることは嫌じゃないです。
先生達へのせめてもの恩返しっていう気持ちが大きかったんですけど、それだけじゃない気持ちも感じています。
それに、加織さんがいつも素敵に仕上げてくれるから嬉しくて。ありがとうございます」

「あら、お礼なんていいのよ。
私は姉さん達と同じで、華ちゃんのことが大好きなの。なんでだろうなあ……華ちゃんを見てると、守ってあげなきゃって気になるのよ。
それに、オーナーからちゃんと手当だってもらってるしね。だから、遠慮とかお礼とか思わなくていいのよ」


加織さんはそうおどけて言うと、ウインクをして帰っていった。