敏腕社長は哀しき音色に恋をする 【番外編 完】
羽山先生に佐織さん、それに加織さん。
私の周りにはただ私のピアノのファンだからってだけで、助けてくれる人がいる。
私は何も返せていないのに……

こうして再びピアノを弾けることは本当に良かったと思う。
だけど、姉のことを思うと、こんな発表する場まで与えてもらったことを、心からは喜べない自分もいる。
私は……夢を奪ってしまった姉に、何もできていない。
そのことだけが、どこか私を後ろ向きにさせる。




時間になって、深呼吸して気持ちを入れ替える。




柿本さんが言うには、私のピアノがめあてだというお客様が増えているようで、生演奏の日はカウンター以外を予約席にしたらしい。
事前に繰り返し告知をしてきたおかげで、不満はほとんど出なかったようだ。

そこまでして聴きに来る方なんて、そういないと思うんだけど……
と、若干心配になってしまう。
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